日本ダウン症協会群馬支部

09月

相談室Q&A

 


Q:質問: 小学校低学年
ひらがなの書き方を家で教えて書けるようになったので、教えるのをやめてしまいました。学校
の授業などで、ひらがなを書いていたので気にしていませんでしたが、ある日お風呂場の曇った
鏡にひらがなを書く様子を見ていると、書き順が違いました。書き順が違うたびに直すのですが
定着しません。ひらがなの書き順が身に着くように教えたいのですが、どのように教えていけば
良いでしょうか。

 
A:答え:  

形はわかっているのですが、書き順までは理解してなかったのかもしれません。順番の理解が
身につくようにすることを提案します。
「上、下」「前、後」は、わかるお子さんですが、何番目はわからないということですので、先ずは、「上、まん中、下」「前、まん中、後」を教えてください。
次に、5までの数がかぞえられるということですので、家での生活で順番がわかる機会をつくります。

 

~ 「上、まん中、下」についての例 ~
〈ステップ1〉
① 3段の引き出しの3段を使って教えます。
② 3段の引き出し全体を意識させた後に、一番上の引き出しを指さし、子供の意識が向いたら
『上』と言って聞かせます。同様に一番下の引き出しを指さし、子供の意識が向いたら『下』と言って聞かせます。最後にまん中の引き出しを指さし、『まん中』と言って聞かせます。
③ 次に、3段の引き出し全体を意識させた後に『上は?』と聞きます。
・お子さんが上の引き出しを指さします。

ポイント:お子さんがわかっている位置からはじめます。3段全体が意識できるように、指
差しながら見せながら感覚を使って導き答えられるようにします。


④ 同様にそれぞれ『下は?』『まん中は?』と聞いていきます。


〈ステップ2〉
① 聞く順番を変えて、3段の引き出し全体を意識させた後に『下は?』『上は?』『まん中は?』と聞いていきます。
② 最終的にどの位置を聞かれても答えられるようにしていきます。

~ 「前、まん中、後」についての例 ~
〈ステップ1〉
① 動物のミニチュアがあれば、同じ向きに、ゾウ、ライオン、キリンと縦一列にならべます。
③ お子さんがどこを見ればよいかわかるように、大人がライオンを指さしながら『ライオンの~』と言い、続いてゾウを指さしながら『前は?』と言います。
・お子さんがゾウと答えます。

ポイント:対象となる二つの物(ゾウとライオン)が意識できるように、指差しながら見せながら感覚を使って導き、前は?の問いにお子さんが答えられるようにします。

③ 同様にそれぞれ意識できるように指さしながら『ライオンの後ろは?』『キリンの前は?』
『ゾウの後ろは?』と聞いていきます。
④ 次に、どこを見ればよいのかわかるようにゾウを指差しながら『ゾウと~』と言い、続いてキリンを指さしながら『キリンの~』と言いライオンを指さしながら『まん中は?』と聞きます。
・お子さんがライオンと答えます。

ポイント:対象となる三つの物(ゾウとライオンとキリン)が意識できるように、指差しながら見せながら感覚を使って導き、『まん中は?』の問いにお子さんが答えられるようにします。


〈ステップ2〉
① お子さんがどこを見ればよいのかわかるように、大人がライオンを指さしながら『ライオンの~』と言い、ゾウは指さしせずに『前は?』と聞きます。
・お子さんがゾウと答えます。
② 同様にそれぞれ意識できるように指さしながら『ライオンの後ろは?』『キリンの前は?』
『ゾウの後ろは?』と聞いていきます。
② 同様に意識できるように指さしながらゾウを指差しながら『ゾウと~』と言い、続
いてキリンを指さしながら『キリンの~』と言いライオンは指さしせずに『まん中は?』と
聞きます。
・お子さんがライオンと答えます。


〈ステップ3〉
① それぞれ指さしせずに『ライオンの前は?』『ライオンの後ろは?』『ゾウの後ろは?』『キリンの前は?』『ゾウとキリンのまん中は?』と聞くと答えられるようにします。

~ 順番がわかるかかわりの例 ~
例 : 順番がわかる機会としては、お風呂に入る時に『1番○○君、2番ママ、3番パパね』と順番
を実際に感じる場面を作ります。また、すべての順番を経験することも必要です。1番はすぐ
できる。2番は少し待つ。3番はたくさん待つ。ということを体で感じることで時の流れが感
じられるようにします。


:効果:

5段の引き出ししかなかったので、下2段を隠して上3段が見えるようにして「上、まん中、下」を教えました。次に「前、まん中、後」は、レゴブロックの動物を使ってアドバイス通りに進めていき、「前、まん中、後」を教えることができました。

また並行して、お風呂に入るときや食器の下膳時、帰宅時に家に入るときなど日常で順番がわかる機会を作りました。「1番○○くん、2番ママ、3番パパ」だけではなく「1番ママ、2番○○くん、3番パパ」など、子どもの順番を変えて、2番や3番も感じられるようにしました。

ちょうどそのころ運動会があり、徒競走で初めて1番になりました。今までもスタートの合図で走り出し、止まったり歩いたりせずに走り続けてはいたけれど、ニコニコ笑顔で走っていました。今思えば、順位を意識していなかったからだと思います。しかし今年の徒競走では「よ~い、」のときから真剣な顔で、スタートの合図をする先生を見て、笛の音と同時に走り出しました。真剣な表情で走り続け、ゴールテープを切るときには両手を上げてゴールし、後ろを振り返っていました。1番をとれたのは、順番を教えたから子どもが順番を意識し、1番がいい、1番になる、と、1番を意識したからだと思います。

その後、ひらがなを書く順番を教えました。文字には書く順番があると教えることができましたので、今は順番を分かって文字を書いています。ありがとうございました。